2021/01/04

飛騨ジビエ普及のための取り組みとジビエ産業の現状

先日は関ジャニのみなさんの番組「関ジャニクロニクルF」でヒダカラ商店で販売しているものと同じ熊鍋が放送され、大変嬉しい反響をいただきました!

番組では、ヒダカラ商店にジビエを提供してくれている猟師一家「飛騨狩人工房」の脇谷さんが絶品の冬の熊肉をふるまっており、訪れていた関ジャニの横山さん、安田さんが本当に美味しそうに召し上がっていました。

関ジャニ∞メンバーも大絶賛!飛騨狩人工房の冬の熊肉の美味しさが別格!

また、「ジビエは美味しい食材」というだけではなく、脇谷さんの狩猟への思い、産業としてのジビエ、そして命をいただくことの大切さと敬意が十二分に伝わる、大変学びの多い内容でした。

この放送を機にジビエに関心を持ってくれる方が増え、認知や市場の拡大へと繋がればとても嬉しく思っています。

ジビエ販売の取り組みと実現したい3つのこと

先日、弊社と飛騨狩人工房さんとのジビエ販売の取り組みについてのプレスリリースを出し、メディア様向けの発表会を行いました。

その時の資料を抜粋しながら、私たちの取り組みやジビエ産業の現状などについてお伝えできればと思います!

自然&農林業に対して

破壊された自然の回復と農作物の被害減少を目指す

日本に昔から生息しているニホンジカやイノシシは、近年急速に生息数が増加し、全国で分布を広げていることをご存知でしょうか?
増えすぎたニホンジカやイノシシが、日本全国で生態系や農林業に深刻な被害をもたらしており、野生鳥獣による農作物の被害額は2018年度は158億円に及んでいます。

被害を与えている野生鳥獣の約7割がシカ、イノシシ、サルとされています。

野生鳥獣による農林水産被害の概要
○ 森林の被害面積は全国で年間約6千ha(2018年度)で、このうちシカによる被害が約3/4を占める。
○ 水産被害としては、河川・湖沼ではカワウによるアユ等の捕食、海面ではトドによる漁具の破損等が深刻。
○ 鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希 少植物の食害、車両との衝突事故等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている。

2013年(平成25年)から、環境省・農林水産省策定のもと鳥獣捕獲強化対策が実施されたことで、年々その被害額は減少しているものの、まだまだ年間100億円以上の損害が出ているの現状です。

イノシシやシカの生息数は増加しているものの、グラフを見ると分かるようにそれらの捕獲数も増えています。

狩猟としての捕獲数にはあまり変化は見られず、被害防止を目的とした捕獲数が顕著に増加しています。

しっかりと捕獲できているのだから、うまく行っているのではないかと思われるかもしれないのですが、実はもう1つここには解決すべき問題があります。

それが、捕獲した鳥獣の利活用についてです。

捕獲されたシカやイノシシのうち、解体施設で食用など利活用できる処理がされているのは全体の10%にも満たないのです。

言い換えると、捕獲した鳥獣のうち、90%以上は埋設や焼却処分されているというのが現状です。

※2019年度実績。農林水産省資料より。捕獲頭数は環境省調べ

ジビエは国産で天然のお肉です。育てるコストもかからず、さらに栄養価も高い。
ジビエとして食べられる食肉の流通量を増やすことができれば、日本の食肉文化や食料自給率へのプラスの影響、そして雇用創出による経済効果等も期待できると思っています。

飛騨狩人工房さんと共に

日本のジビエ産業を盛り上げる

まず、猟師を営んでいる人の現状からお伝えすると、想像がつく通りだと思いますが、昔に比べて狩猟をする人は年々減っています。人数の減少とともに高齢化も進み、尻すぼみ状態となっています。

大日本猟友会会員さんの声

 ○ 担い手の減少・高齢化に関するもの 

・ 捕獲隊の編成ができなくなりつつあり、特に平日の対応が 困難。 (和歌山県、北海道猟友会 他)

・想定した以上に多く、会員の減少に歯止めがかからない。 (三重県猟友会 他)

 ○ 狩猟に対する国民等の理解に関するもの 

・ クマ等の野生鳥獣から地域住民や地元の自然を守ってい るにもかかわらず、苦情の矢面に立つことが多い。 (岩手県猟友会 他)

・ ボランティアとして有害捕獲に協力していても、趣味で殺生 を行っているものと誤解されている。 (兵庫県猟友会 他)

・ 肉の需要が広がらない。 (和歌山県猟友会)

 ○ 有害捕獲の従事に関するもの 

・ 休日や夜間に従事することが多く、休みが取れない。 (静岡県、徳島県猟友会 他)

・ 本業との両立や個人で負担する経費が重荷になっている。 (三重県猟友会 他)

・ 地区の会員が少なく、1人当たりの負担が年々過大になっ ている。 (岩手県猟友会 他)

・ 各種規制が効率的な捕獲の妨げとなっている。 (北海道猟友会)

(社)大日本猟友会説明資料より抜粋

岐阜県内の狩猟免許所持者数の直近10年間の推移

全国的には狩猟人数は減少傾向にあるものの、岐阜県では直近10年間で狩猟免許所持者数は微増しています。
年齢層としては60歳以上が圧倒的に多く、高齢化の傾向は強く感じますが一方でここ5年間のうちに10代~30代の狩猟免許所持者数が急激に増えており、今後の活躍とジビエ産業の発展に期待がかかります。

持続可能性の高い経営をするために

狩猟人口の減少と高齢化という問題の他に、もう1つジビエ産業には大きな課題があります。
それが、「持続可能性の高い経営」です。

 ①食品衛生法、②安定供給、③価格、④情報の非対称性  

この4点が大きな課題として立ち塞がっているのが現状です。

飛騨狩人工房さんと共にヒダカラが目指していることは、主に上記4点の課題のうち、主に ②~④  です。

詳しくは後述させていただきますが、インターネット通販のサービスを通して、飛騨狩人工房さんのジビエ商品の流通販路の拡大を押し進めることで収益モデルの確立、そして記者発表やSNSなどを使った発信を通してジビエの魅力の訴求とジビエを食肉として食べることのハードルを下げるなどに取り組んでいます。

消費者のみなさんに対して

ジビエの認識を変えて、食の選択肢を増やす

昨今のジビエブームによって、ジビエ自体の認識や取り扱っている飲食店も増えたように思います。
しかし、まだまだジビエ料理は「珍しい」「臭いが強い」「高級料理」といったイメージをもたれている方が多い印象を受けます。

また、ジビエ料理を食べたことのある場所は飲食店と回答した方が多いことも印象的です。
「ジビエ料理を自宅で気軽に食べる」というご家庭はかなり少ないというのが現状ですが、その認識を変え、家庭で食べるお肉の選択肢の1つになるまでに普及しきたいと思っています。

ヒダカラが取り組んでいること

ジビエの捕獲から解体、精肉、加工、販売までを一貫して行う猟師一家の飛騨狩人工房さんと一緒にジビエの普及、認知拡大に向けた取り組みをしています。

飛騨狩人工房さんとヒダカラの関係図

飛騨狩人工房さん:美味しい飛騨のジビエをつくる
ヒダカラ    :美味しい飛騨のジビエを広める

ざっくり説明すると上記のような役割分担で飛騨ジビエの美味しさをやジビエ普及のための旗振り役となれるよう取り組んでいます。

飛騨狩人工房さんは、自分たちで狩猟をするだけではなく、個人ハンターさんからの鳥獣の買取りも行っています。

前述の「持続可能性の高い経営をするために」の部分にも関わってくることですが、ネット通販を通して収益化モデルが安定することで、

①飛騨狩人工房さんが個人ハンターさんから買い取れる鳥獣の量や頻度が増える

②廃棄される量が減る&個人ハンターさんの収益が増える

③狩猟人口の増加や雇用に繋がる

といったプラスの循環が生まることが大いに期待できる結果が出てきています。

取組事例①パッケージ&同梱物デザイン

家庭でも気軽に食べていただけるよう考えたパッケージデザインや、初めてでも簡単に美味しく食べていただける説明付きの同梱物を作成しました。

運がよければ、実際に飛騨狩人工房さんが獲ったカモの羽や薬莢といった遊び心をくすぐるようなアイテムが同梱物として入っていることも!

取組事例②ネット販売実績

10月中旬の販売から、約2ヶ月間で300セット以上のご注文をいただきました!

いただいたレビューも大変嬉しいものばかりで、ご家庭で美味しく飛騨ジビエを食べていただけて本当に感無量です!

取組事例③各種SNSの使い分け

Twitter、Instagram、YouTubeと飛騨ジビエの美味しさをお伝えするために使い分けで発信しています。

最後に

鳥獣は決して害獣などではなく、私たちに良質なタンパク質を提供し、農村や食料の持続可能性を高める貴重な森の恵みです。

ジビエに対する見方が変わることで、「害獣」という概念や認識そのものを変えていけると思っています。

そして、一過性のブームではなく、ジビエが食肉として根づき、普段食べている牛や豚などと同じようにお肉を食べる際の選択肢になることを目指し今後も取り組んでいきます。