たくさんの方に温かいコメントやエールをいただいている、深山豆富店の事業引き継ぎ。私たちがなぜ深山豆富店を継ごうと思ったのか、これから興味を持ってくださった方に向けて書いておこうと思う。
深山豆富店の概要についてご覧になりたい方はこちら。
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深山豆富店との出会い
深山豆富店は、約17年前に白川村の伝統的な石豆富の製法を村の師匠から引継ぎ開業し、2021年3月31日に新型コロナウイルスの影響による売上減少と担い手の高齢化により、村人やファンの方から惜しまれながら閉店したお店。一大観光地の白川郷から車でわずか10分足らずではあるが、静かで自然に囲まれたところにある。
その事業をまるごと引き受けて今仲間を募集しているのですが、先代の大野誠信さんとは古い付き合いというわけではなく、2020年5月ごろ、約1年前に出会ったばかり。私たちは同年5月から、白川村のふるさと納税の運営代行を受託していて、村の事業者向けに勉強会を行い、そこで初めてお会いした時は生き生きとしていらっしゃったことを鮮明に思い出す。
そのふるさと納税の運営の中で初めて深山豆富店の”石豆富”を食べた。大豆の味が濃くて美味しいのは言うまでもなく、今まで『やわらかくて美味しい豆腐』しか食べたことがなかったため、硬さを追求した豆富という存在にとても面白さを感じた。とても固いので縄で縛っても崩れない。写真は、私たちが撮らせていただいたものなので、本当です。
大野さんは、ふるさと納税に出品されて、全国に自慢の石豆富をお届けできることになり、また、私たちにもお中元、お歳暮と様々なタイミングでお豆富を送ってくださった。だから、なかなかお会いできなくても身近に感じていたし、食べるチャンスも多く、愛着がある事業者さんの一つ。それに、ヒダカラスタッフみんなが石豆富が大好き。たまに白川村に行くときには買って帰るお土産の定番だった。
突然の閉店
そんな深山豆富店さんに新商品や新しい組み合わせを提案していた矢先のこと、突然の閉店のお知らせを白川村担当のスタッフから聞いた。直観的に『何とかできないか』と思ったものの、その時は何のアイデアもなかった。でも最後に、お話だけでも聞きに行きたいと思い、閉店する1週間前の3月25日に、お店に伺った。
『もう何ともできなくてね。一人でやってるのもしんどくなってきたんや。』
と、ずいぶん疲れた様子だった。それでも、大野さんは大胆に笑いながら、『石豆富は何とか残したいと思ってるんや。ヒダカラさんで事業まるごとやってもらえませんか?』と、冗談めかして言われた。その場で具体的な金額のお話もあり、まったくの冗談ではなかったのだと思う。
その時から、私たちは真剣に考え始めてしまった。今まで石豆富が大好きだったし、白川村の数限られた地場産品の一つがなくなってしまうことに何とも言えない寂しさを感じた。一方で、今までは制作、PR、企画、伴走など、メーカーや小売店の方と一緒に進める事業が多く、豆富どころか食べ物さえ作ったことがないので、本当に私たちにできるんだろうかと不安があった。
その場では、『本当にもったいないし、何とか残したいですね』ということだけ伝えて、持ち帰った。もう1週間後には閉店してしまう予定の日だった。
事業を引き継ぐ決断まで
帰り道にスタッフと、もし深山豆富を引き継いだらという前提で色々な妄想を話した。何とかなる気がした。そして持ち帰って夫とも話したが、その時からその先まで、『やっぱりやらないです。』と言う選択際はないだろいうなと直感していた。
もし私たちが引き継がず閉店してしまったりまったく別モノになってしまっても、そのまま一年や二年たてば何事もなかったような日常に戻るだろう。でも、人口の少ない(現在約1,500人)白川村ではやっぱりお店をやったりビジネスをやったりするのは難しい、と思われる一つの事例になってしまうかもしれないし、新型コロナで先行きの見えない閉塞感が更に高まるかもしれない。逆に、もし私たちが引き継いだら、白川村にこんなに魅力を感じる私たちのような人がいること、そして人口が少なくても、魅力があれば全国の方から注文をいただけたり、村にはまだこんな可能性があったんだと思ってもらえるかもしれない。それに一番大きいのは、石豆富にほれ込んで人生を掛けてチャレンジしてきた大野さんが喜んでくれるだろうと思った。
生きてる間にあと何回、地域や特定の方に喜んでもらえるようなこんなチャンスが巡ってくるだろう。
大方心が決まっていた私たちは、色々な不安を抱えながらも大野さんやご家族の方と何度もお話した。そんな中で、私たちのことを気遣って、『こんな儲かるかどうかわからない事業よりも、既存事業のようにネット関連でやっていくほうがいいんじゃないですか?』と言われることもあった。そんな中でも、白川村にはいいものがいっぱいあるのに勿体ない、と、村の良さをもっと広めたいという想いがヒシヒシと伝わってきた。表立って外に売っていこうという人は少ないかもしれないけど、世界遺産を守っていく大変な中でも村の良いところをもっと知ってほしいという気持ちを持ってる村人たちも多いのかもしれないと感じた。
これからやりたいこと
それから私たちは4月ー5月で収支計画を立て、いろんな売り方や今後の働き方、継業のカタチを考えた。何度もディスカッションしたり妄想したりした。”飛騨のタカラモノを見つけ輝かせる” ”まちに個性が残る未来を創りたい”という軸はぶれないし、既存事業とのシナジーも大きい。しかも、白川村に拠点を持つことで新たな人脈ができもっと地域に関われるチャンスに繋がる可能性もある。”豆富職人”になるのは孤独で大変そうに感じるけど、ヒダカラのチーム力をフル活用して”豆富事業”としてチームで取り組めば、活路があるんじゃないか。そうすれば新しい継業の仕方も見えてくるかもしれないし、それがそのあとの地域の魅力的なものを残すための一つのノウハウになるかもしれない。計画通りにいくかはやってみないとわからないけど、少し大きな実験をしてもいいくらい魅力を感じた。
その後、豆富事業の責任者となる方と奇跡的に出会い、先代との話も無事に収束に向かい、6月からはいよいよ先代から学ぶ修行をスタートする。途中、揺らぐこともあったけど、粘り強く対話を続けて良かったと、思っている。これからヒダカラのスタッフと一緒に技術を学び、おいしい豆富を作れるようになったら、そのあとはネット販売はもちろん、新たな切り口の商品開発やPRなど、やりたいことが山積み。でも、メンバーがそろっている今のヒダカラならいろんなことが出来るのではないかと思っている。
そんなチャレンジングで壮大な深山豆富店の事業承継、私たちと一緒に復活し、立て直しませんか?ヒダカラや地域に新しい風を吹かせるような、素敵な出会いを楽しみにお待ちしています。
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